写真家のセバスチャン・サルガドのことは、
NHKの「日曜美術館」で知りましたが
あっという間に放送終了。
再放送もなんだかんだでしっかり観ることができず悔しかったです。
それでもすっかり魅せられてしまい、写真集を購入。昨日届きました。
「サヘル」と言う題名。アフリカの飢餓の様子を写したものです。
それらに関しては、それなりの一般知識はもっていますし、こういう題材は珍しくはありません。
やせて皺のよった母親のおっぱいに口をつける子どもの皮膚もボロ布のようで張りは無く
生きているのだか判別つかないのは人間もラクダも同じで、痛々しさに胸は詰まります。
私は食糧難について、内戦についてだの考えさせられます。
が、
それがこの写真集を手にした理由ではなく、非常な美しさを感じたからなのでした。
表紙にある親子の写真のなんと美しいこと。
悲惨な状況のなかで写された写真はどれも意図を感じさせないというのに、一つ一つが絵画のよう。
貧困に苦しんでいる人たちの表情、疲れきっているアフリカ人の表情は、どういうわけだかヒリヒリするほどの生命力があって神々しいほどなのです。
報道写真ではその事実を伝えるための「証拠」としての役割があります。
そして、どれほどショッキングに写せたかを競うような物もあるようですが
アフリカの飢餓の現実をここまで写しこむサルガドという人は
とてもとても冷静沈着に見つめてきたのでは無いだろうか…と思います。
暑い国なのに、冷えた風が吹いていて
泣き声や悲鳴で溢れているはずのそこは、どういうわけだか静まり返っているみたい。
救いを求めている子どもから大人すべてがどこか諦観の域に達しているみたいな顔して
写真からは神様に守られていそうな世界に見えるというのに
実際彼らのどこまでが人で、どこからが神様になってしまっているのかわからないので不安になります。
凄まじくも静かな世界。暑く冷たい風。
とてもショックを受けました。